十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第十三章 優しい同僚の支え
「気をつけて帰れ」
そう言い残して去っていった藤堂部長の背中が、ずっと胸に焼きついていた。
冷たい拒絶と、不意の優しさ。
突き放されているのに、守られているようで。
――どうして、あんなふうに優しくするの。
答えのない問いを抱えたまま迎えた翌日。
私はオフィスで、いつになく静かに仕事をしていた。
心ここにあらずの私に気づいたのは、やはり彼だった。
「西園寺さん、大丈夫?」
隣の席から声をかけてくれたのは、同僚の佐伯。
柔らかい笑顔が、張りつめていた心を少しだけ緩ませる。
「え……あ、はい」
慌てて笑顔を作るけれど、彼は首を傾げてこちらを覗き込んだ。
「無理してるでしょ。顔色、よくないよ」
その言葉に、胸が詰まる。
昨夜の涙を、見抜かれている気がした。
昼休み、机に突っ伏していたら、コトリと何かが置かれた。
顔を上げると、温かいスープのカップが視界に入る。
「冷えた身体にはこれが一番。食べなよ」
にっこり笑う佐伯の手には、もうひとつ同じスープ。
「……佐伯さん」
胸の奥に熱いものが込み上げた。
誰にも言えない孤独を抱えていたのに、こうして自然に寄り添ってくれる人がいる。
ただそれだけで、涙が出そうになる。
「何かあった?」
小さな声で尋ねられ、私は首を振った。
「いえ……大丈夫です」
けれど彼は追及せず、優しく笑った。
「そっか。じゃあ、無理だけはしないこと。困ったら、いつでも俺を頼って」
その声は温かく、穏やかで。
藤堂部長の冷たい拒絶とは、あまりにも違っていた。
夕方、エレベーターの前で一緒になったとき。
「今日は送るよ。ひとりで帰すの、心配だから」
佐伯の一言に、胸が震える。
雨に濡れた夜、傘を差し出した彼とは違う。
けれど、佐伯の隣に立つと、不思議な安心感に包まれた。
――この優しさに甘えてしまったら、私はどうなるのだろう。
揺れる心に問いかけながら、私は彼の横顔を見つめていた。
そう言い残して去っていった藤堂部長の背中が、ずっと胸に焼きついていた。
冷たい拒絶と、不意の優しさ。
突き放されているのに、守られているようで。
――どうして、あんなふうに優しくするの。
答えのない問いを抱えたまま迎えた翌日。
私はオフィスで、いつになく静かに仕事をしていた。
心ここにあらずの私に気づいたのは、やはり彼だった。
「西園寺さん、大丈夫?」
隣の席から声をかけてくれたのは、同僚の佐伯。
柔らかい笑顔が、張りつめていた心を少しだけ緩ませる。
「え……あ、はい」
慌てて笑顔を作るけれど、彼は首を傾げてこちらを覗き込んだ。
「無理してるでしょ。顔色、よくないよ」
その言葉に、胸が詰まる。
昨夜の涙を、見抜かれている気がした。
昼休み、机に突っ伏していたら、コトリと何かが置かれた。
顔を上げると、温かいスープのカップが視界に入る。
「冷えた身体にはこれが一番。食べなよ」
にっこり笑う佐伯の手には、もうひとつ同じスープ。
「……佐伯さん」
胸の奥に熱いものが込み上げた。
誰にも言えない孤独を抱えていたのに、こうして自然に寄り添ってくれる人がいる。
ただそれだけで、涙が出そうになる。
「何かあった?」
小さな声で尋ねられ、私は首を振った。
「いえ……大丈夫です」
けれど彼は追及せず、優しく笑った。
「そっか。じゃあ、無理だけはしないこと。困ったら、いつでも俺を頼って」
その声は温かく、穏やかで。
藤堂部長の冷たい拒絶とは、あまりにも違っていた。
夕方、エレベーターの前で一緒になったとき。
「今日は送るよ。ひとりで帰すの、心配だから」
佐伯の一言に、胸が震える。
雨に濡れた夜、傘を差し出した彼とは違う。
けれど、佐伯の隣に立つと、不思議な安心感に包まれた。
――この優しさに甘えてしまったら、私はどうなるのだろう。
揺れる心に問いかけながら、私は彼の横顔を見つめていた。