十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第二十六章 さらに揺れる心
元婚約者との再会は、思っていた以上に心を抉った。
「彼に相応しいのは私だけ」――その言葉が頭から離れない。
十年前と同じ。
私はまた、影に押し潰されようとしていた。
翌日。
出社すると、オフィスの空気が一段と冷ややかになっているのを感じた。
「やっぱり……彼女は戻ってきたのよ」
「西園寺さん、もうおしまいじゃない?」
囁き声が背中を突き刺す。
足がすくみそうになるのを必死で堪え、デスクに向かう。
資料をまとめる手が震えて止まらない。
そのとき。
「西園寺」
低い声に呼ばれ、振り返ると藤堂部長――蓮が立っていた。
「今日の午後、先方との打ち合わせに同席しろ」
淡々と告げられる。
業務命令。なのに、胸が痛む。
「……わかりました」
小さく答えた声は、かすれていた。
午後の打ち合わせ。
重役たちが並ぶ席の奥に、彼女――元婚約者の姿があった。
洗練されたドレスに、余裕を漂わせた笑み。
「お久しぶりです、蓮さん」
彼の表情が、一瞬だけ揺れる。
そのわずかな変化が、私の胸を鋭く刺した。
――やっぱり。
彼女はいまだに彼の心を揺さぶる存在なのだろうか。
打ち合わせが終わり、私は誰よりも早く会議室を出た。
胸の奥に押し寄せる痛みに耐えきれなかった。
廊下の片隅で深呼吸を繰り返す。
「……もう、無理かもしれない」
小さな声が漏れる。
「西園寺さん」
優しい声が背後から響いた。
振り返ると、佐伯が立っていた。
「辛そうだ……」
そう言って差し出されたハンカチに、思わず涙が滲んだ。
「俺は、ずっと君の味方だから」
真剣な眼差し。
その温かさに救われながらも、同時に苦しくなる。
――私は、誰を求めているのだろう。
夜、自室でひとり。
蓮の揺れた表情と、佐伯のまっすぐな瞳が交互に浮かんだ。
「……どうして」
どうして心は、こんなにも揺れてしまうの。
答えを見つけられないまま、枕を濡らして眠りについた。
「彼に相応しいのは私だけ」――その言葉が頭から離れない。
十年前と同じ。
私はまた、影に押し潰されようとしていた。
翌日。
出社すると、オフィスの空気が一段と冷ややかになっているのを感じた。
「やっぱり……彼女は戻ってきたのよ」
「西園寺さん、もうおしまいじゃない?」
囁き声が背中を突き刺す。
足がすくみそうになるのを必死で堪え、デスクに向かう。
資料をまとめる手が震えて止まらない。
そのとき。
「西園寺」
低い声に呼ばれ、振り返ると藤堂部長――蓮が立っていた。
「今日の午後、先方との打ち合わせに同席しろ」
淡々と告げられる。
業務命令。なのに、胸が痛む。
「……わかりました」
小さく答えた声は、かすれていた。
午後の打ち合わせ。
重役たちが並ぶ席の奥に、彼女――元婚約者の姿があった。
洗練されたドレスに、余裕を漂わせた笑み。
「お久しぶりです、蓮さん」
彼の表情が、一瞬だけ揺れる。
そのわずかな変化が、私の胸を鋭く刺した。
――やっぱり。
彼女はいまだに彼の心を揺さぶる存在なのだろうか。
打ち合わせが終わり、私は誰よりも早く会議室を出た。
胸の奥に押し寄せる痛みに耐えきれなかった。
廊下の片隅で深呼吸を繰り返す。
「……もう、無理かもしれない」
小さな声が漏れる。
「西園寺さん」
優しい声が背後から響いた。
振り返ると、佐伯が立っていた。
「辛そうだ……」
そう言って差し出されたハンカチに、思わず涙が滲んだ。
「俺は、ずっと君の味方だから」
真剣な眼差し。
その温かさに救われながらも、同時に苦しくなる。
――私は、誰を求めているのだろう。
夜、自室でひとり。
蓮の揺れた表情と、佐伯のまっすぐな瞳が交互に浮かんだ。
「……どうして」
どうして心は、こんなにも揺れてしまうの。
答えを見つけられないまま、枕を濡らして眠りについた。