十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
エピローグ 数年後の二人の姿
休日の朝。
大きな窓から差し込む陽光に照らされながら、私はキッチンで湯気の立つカップを並べていた。
「……紗良」
背後から低く優しい声がする。
振り向くと、ネクタイを緩めた蓮が眠たげな表情で立っていた。
「もう、休日くらいゆっくり寝てていいのに」
そう笑うと、彼はゆっくり歩み寄り、私を後ろから抱きしめた。
「お前がいないと眠れない」
囁きに、頬が熱くなる。
「十年前は何も言えなかったけど、今は全部伝える。……俺は、お前を愛してる」
振り返ると、変わらない真剣な瞳がそこにあった。
指先に触れ合う温もりが、毎日の愛を確かめるように心地よい。
「私も……あなたを愛しています」
自然と零れた言葉に、彼の表情がやわらかく崩れる。
そのとき、小さな足音がリビングに響いた。
「パパー、ママー!」
駆け寄ってきた子どもを抱き上げる蓮の腕が、嬉しそうに震える。
「お前に似て、よく笑うな」
「いいえ、目元はあなたそっくりよ」
笑い合う声が、静かな家に温かく響いた。
すれ違いと誤解で遠回りした二人の道。
けれど今は、こうして同じ未来を歩いている。
「蓮、ずっと隣にいてね」
「当たり前だ。……永遠に」
窓の外に広がる青空が、これからの未来を祝福するように輝いていた。