毒舌男子の愛は甘い。

ダメンズ引き寄せ率100%



「また……やらかしたの?」



カフェの奥、角のソファ席。



ミルクたっぷりのカフェラテを手に、友達の千紗が目を丸くしている。



「……うん。まさかの、“元カノとは終わってる詐欺”だった」


そう言って笑う私に、千紗はため息をひとつ。


「藤宮梓(ふじみや あずさ)。大学三年生。経済学部。特技は……“ダメンズを的確に引き当てること”、って感じ?」


「やめて、なんかそれだけ切り取ると才能みたいになるじゃん」



苦笑いしながらストローをくるくるいじる。


だけど、否定できないあたりが悔しい。




「でもさ、今回の人は本当にちゃんと終わってるって言ってたし、“今までの彼女とは違う”って……」


「──そのセリフ、聞いたのこれで何人目?」


「……三人目」


「はいアウト」



千紗はすぐさま手元のスマホに“ダメンズ歴”とでも書きたそうなメモを打ち始めた。



「いい?今までの梓の元カレざっとまとめると──
1人目:浮気常習犯、浮気してるくせに束縛強い。
2人目:超ドケチ、誕プレが100均のお菓子な貢がせ男。
3人目:夢追い系自称ミュージシャン、働かない。
4人目:メンタル依存系、“君しかいない”が口癖

で、今回は、彼女と別れてないのに"別れた詐欺"の二股男。」


「やめてやめて!読み上げないで、泣く!」


「もうさ、ある意味才能でしょ。
どうやったらそんなピンポイントで地雷原突っ走れるのか教えて?」


「いや、ほんと私が知りたい……」



手のひらで顔を覆いながら、思わずその経歴に、苦笑い。



いつもこうやって、笑い話にしてるけど。



でも、たぶん。



ほんとは、
“ちゃんと大事にされたかったな”って、
毎回ちょっとだけ、思ってる。



「……騙されたくて騙されてるわけじゃ、ないんだけどなあ」

 
つぶやいた私の声に、千紗がちらりと横目を向ける。



「分かってる。あんた、バカじゃないもん。
ただ、誰かにやさしくされるとすぐ信じたくなっちゃうだけでしょ?」


「……それが、バカなんだよ。」



軽く笑ってごまかすけど、
ほんとはちょっとだけ、胸がちくっとした。




「ねえ、梓」


千紗がふと声を落とした。


「ちなみにさ、明日の夜、合コンあるけど行く?
ちょうどあと一人探してたんだよね。梓、フリーになったならタイミングばっちり」


「えっ、いいの?行きたい!」



思わず笑顔で答えたけど、心のどこかが少し痛んだ。



またか。


こんなに簡単に切り替えられる自分が、どこか悲しい。



でも、立ち止まってばかりもいられない。


傷ついたって、泣いたって、過去は変えられない。


それに、どこかにきっと、私の運命の相手がいるはず。


だったら、探しに行かないと、もったいないよね。



だから、明日は笑って行こう。



新しい出会いに、素直な自分で向き合おう。



そう決めて、梓はそっと息を吐いた。




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