毒舌男子の愛は甘い。

合コン当日。


集合したのは落ち着いた居酒屋。


男女3人ずつと聞いていたのに、席に着いたのは女子3人に対し、男子はなぜか2人だけ。


(あれ、人数合ってない……?)


梓が首をかしげた時、男性側のひとりが声を弾ませた。


「じゃあ、時間なったし、自己紹介でもしよっか!」


「賛成〜!!女子からいこうよ〜」


千紗がすぐに乗っかり、自己紹介が始まった。


「千紗です、〇〇女子大3年、経済学部。趣味はカフェ巡りとドラマ鑑賞です!よろしくね~」

「真紀です、同じく〇〇女子大で、文学部の3年です!趣味は読書と映画です」

「藤宮梓です、ふたりと同じ大学で、経済学部の3年。趣味は料理と雑貨屋巡り……よろしくお願いします」


続いて男子側。




「裕也って言います、××大学情報学部でゲームとキャンプが趣味です。」



「翔太です、同じく××大学の法学部で3年。サッカー観戦と飲み歩きが好きです!あと、ひとり遅れてるけど、ごめんねー!」


翔太が笑いながら言った、そのとき。


「あっ、きたきた。凪おせーよ!!!」


居酒屋の入口から、ひとりがゆったりと歩いてきた。


「……うるさい。急に呼び出したのそっちだろ」


低い声でぼやきながら、その人は、梓の正面に腰を下ろした。


遅れてやってきたその人は、白のTシャツに黒のカーディガンを無造作に羽織り、濃紺のワイドスラックスを合わせたシンプルな装い。


着飾る気配はないのに、視線を集めてしまう存在感があった。


黒髪は前髪が目にかかりそうで、艶やかさの中に少しの無頓着さを含んでいる。


中性的な顔立ちは整っていて、伏しがちな目元と笑わない薄い唇が冷めた印象を与えていた。


「凪、今自己紹介中だから。言って。学部も」


裕也に促されると、凪は小さくため息をつき、面倒そうに口を開いた。


「……水野凪(みずの なぎ)。心理学部3年。」


それだけを短く言って、肘をついて視線を逸らす。


「こいつ、今日人数合わせで来てるからさ。愛想悪くても許してあげて」



裕也が笑って言うと、凪は横目で睨みながら小さくため息をついた。


「凪、顔だけはいいけど中身ドライだから。けど、根は悪いやつじゃないんで」

「……その紹介、やめろって言ったろ」


ぶっきらぼうに返す彼の横顔に、女子陣の視線が自然と集まる。


梓もまた、向かいに座る凪から、なんとなく目を離せなかった。


(この人、なんか不思議……)


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