毒舌男子の愛は甘い。
「……実習とかで、これからもっと忙しくなると思うけど」
凪がぽつりとそう言ったとき、心がきゅっとなる。
(あ、そっか…)
──これからは、会える時間が減ってしまうのかもしれない。
そんな不安が胸をかすめた。
けれど、凪は、まっすぐ私の目を見て続けた。
「……でも、絶対、会う時間つくるから——梓に。」
「っ」
下の名前を呼ばれた瞬間、胸の奥がぎゅうっと熱くなる。
苦しいんじゃない。あたたかくて、嬉しくて、心がほどけていく。
名前って、こんなにも優しく響くんだ。
頬がじんわり熱くなって、思わず笑みがこぼれる。
「……うん。凪くん」
そう返したら、彼は少し照れたように、でも心から嬉しそうに笑った。
その笑顔がまぶしくて、あたたかくて——
胸の奥に、小さな灯がふわりとともった気がした。
もう一度、自分から凪に身を寄せると、
彼も優しく、でもしっかりと抱きしめ返してくれた。
その抱擁が、何よりも幸せで、
この瞬間の気持ちを、ずっと抱きしめていたいと思えた。