毒舌男子の愛は甘い。
彼の愛は甘い
———凪と付き合い始めてから、
梓の、尽くしたいスイッチは完全にオンになっていた。
凪の好きそうなものを見つければ買ってきて、疲れてそうなら何かしてあげたくなる。
気づけば、自分の時間よりも凪のことを優先してしまう。
けれど、それは、以前のように嫌われたくなくてしてるわけじゃなくて、
凪が好きすぎて勝手に体が動いてしまう。
今日だってそう。
夕暮れ。凪の部屋のキッチンに立ちながら、私は無意識に凪の好物の調理を進めようと意気込んでいた。
「凪くん、休んでていいよ。実習の課題とかあるならやっても――」
「……梓」
背後から呼ばれて振り返ると、少し眉を寄せた凪。
「もう、尽くしすぎ禁止」
「……え?」
「俺、別に尽くして欲しいわけじゃない。隣にいてくれればそれでいい」
一瞬、胸がぎゅっとなる。
ぶっきらぼうな口調なのに、奥にはちゃんと優しさが滲んでいた。