クズなキミからの不適切な溺愛
※※

亮輔のバーを出て、タクシーに乗ってわずか十分程。

「もう少しで着きますよ」

「んー……」

タクシーの後部座席で俺の肩に頭を預けて、すやすや眠っているのは光莉さんだ。

(マジか……)

バーを出る直前、すこし眠そうにしていた彼女を見て慌ててタクシーを呼んで乗せたまでは良かったが、僅か十分で深い眠りに落ちるとは思わなかった。

(酒は次回は一杯までだな)

俺は彼女のアパートに辿り着いたのをみて、タクシーの運転手に支払いを済ませると光莉さんの身体を脇に抱えるようにしてエレベーターに乗り込む。

「光莉さん、もう家つくよ」

「はー……い」

一応返事は返ってくるが、彼女の目はまた今にも閉じてしまいそうだ。

「鍵、借りますね」

俺は彼女の鞄から『サマーサイダー』のキーホルダーがついた鍵を取り出すと、鍵穴に差し込む。玄関に入れば俺は自分の鞄を放り投げて彼女を横抱きにする。

「……ベッド、行くね」

「ん……吉良、くんの匂い、だ……」

「ちょ……っ」

光莉さんは俺の胸に猫のように頬を擦り寄せると、にこりと微笑む。

その瞬間、俺の全身は火がついたようにカッと熱くなる。

(やばい。これはやばい)

(しっかりしろ、俺!)

俺は脳内で自分を左右から平手打ちする。

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