クズなキミからの不適切な溺愛
そして四苦八苦して彼女と木の上から見た景色は、太陽が眩しくて空は青くて思っていたよりもずっと綺麗で息がしやすかった。

その景色を見ながら彼女が小さく口を開く。


『……私ね、両親が事故で死んじゃったから。ここだったらお父さんとお母さん、私のこと見えるかなって』

こう聞いた俺は、彼女が親に愛されて育ったことをただ羨ましく思った。

『もっと大好きって言えば良かったな。心の中で思ってても言葉にしても伝わらないから』

『……俺はそうは思わない。言葉にしたところで何も伝わらない。大人って自分勝手でキライ』

勝手に結婚して俺を産んで、勝手に喧嘩して険悪な雰囲気になって、俺のことなんか無視して勝手に話が進んでいく。


『俺はモノじゃねぇのに、どっちが引き取るとか、どっちの方が幸せにできんのかとか、ウザすぎて吐き気する。親なんて居なくなればいいのに』

鬱憤を晴らすように言葉に吐いてから俺はハッとする。

子供ながらに親を亡くして悲しんでいる、見ず知らずの女の子を傷つけたと思った。

でも彼女はそんな俺に向かって微笑んでいた。

『優しいんだね』 

『え? 俺が?』

『うん、優しいから我慢しちゃうんだよ。それにキミは物じゃないよ。だから言ったらいいんだよ。自分勝手だって、キライだって言えばいいんだよ』

──優しい、なんて初めて言われた。

子供らしくない、何考えているかわからない子。  
いつも俯きがちで笑わない無愛想な子。
自分の思いを口にしない、感情のない子。

他人からの評価はそんなものばかりで、親は基本的に放任主義だった。

大人になってからは、よく言えば自由にさせてくれていたんだろうなとは思ったが。

< 108 / 218 >

この作品をシェア

pagetop