クズなキミからの不適切な溺愛
私はまばらに残っている社員に挨拶をすると、会社をあとにする。

そして外に出てすぐにスマホを見るが、和馬からのメッセージは入っていない。

(まだ飲み会なのかな)

(はぁ。和馬とご飯行きたかったな。行きたいレストランがあったのに……)


今朝、吉良くんに痛いところを突かれたと思った。

私は和馬とはここ半年ほどは二週間に一度会えたらいい方になっている。


(記念日忘れるくらい忙しいってことだよね……)

(それに記念日とか拘ってるの子供っぽいし)

(大人なんだから)

私は自分を慰めるようにそう言い聞かせる。

和馬の所属している品質管理部は他の部署に比べて元から残業は多いが、ここ最近の和馬は特に忙しいようだ。


二人でゆっくりご飯を食べて眠ったのはいつだったか、忘れてしまうほどに会えていない。

秘密の社内恋愛のため、食堂や廊下で会ってもお互いに同期として軽く挨拶を交わす程度だ。


「はぁ……全然上手くいってなんかないよ」

ため息と共に小さな声で吐き出した言葉は、あっという間に夜空に吸い込まれていく。

「……あのとき、仕事辞めるって言えば良かったのかな」
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