クズなキミからの不適切な溺愛
サァっと初夏の風が私と美蘭の間を通り過ぎていく。私たちは互いに視線をぶつけたまま逸らさない。

「ふふ……」

「何が面白いの?」

「……先輩がおかしなこと言うからですよ。あたしと父が被害者なのに。あんたのせいで家族がめちゃくちゃになったんだから!」

「何言ってるの?! センターラインをはみ出して私の両親が乗った車と接触事故を起こしたのは、間違いなくあなたの父親でしょ!」

私が小学校五年生の時、雨でセンターラインをはみ出したトラックが両親の車と正面衝突する事故を起こした。

そのトラック運転手の名前が芝田義平だ。

神楽さん経由で探偵に頼んだ調査報告書によると、事故のあと美蘭の両親は離婚し、彼女は母親に引き取られたが精神を病んだ母親が自ら命を絶つと、児童養護施設に入ったと記されていた。


「なんにも知らないのね」

「どういう意味?」

「あの事故は不運が重なった事故だったの。父はあの日、雨の中、生活のために無茶な配送を請け負い納品に向かうところだった。そして事故を起こした。けど雨のせいでセンターラインをはみ出したんじゃない。飛び出してきた猫を避けたはずみで車にぶつかったのよ」

「猫? そんなこと聞いたことないわ」

「そうでしょうね。アンタの祖母も警察も信じなかった。警察はうたた寝したんだろうって父を責めて、拷問のような取り調べをしたと聞いたわ。今みたいにドラレコも普及してなかったから証拠もなく、父は殺人犯みたいな扱いをされた」


美蘭は両手の拳を握りしめたまま、ギッと私を睨みつける。


「その後、刑が決まって執行猶予がついたけど近所の目からあたしたちを守るために離婚した。でも母親はそのあと鬱になってネグレストで育った。父は罪の意識から酒に溺れるようになりアルコール中毒で早くに死んだわ」

「…………」

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