クズなキミからの不適切な溺愛
「両親を亡くしたあたしは養護施設に引き取られた。そして大人になって施設を出ることになって、心機一転ようやく自分の人生を歩めるって思ったけど、それは間違いだった。親の責任は子の責任? ろくに就職もできなかったわよっ」

美蘭が私に人差し指を突きつける。

「どこへいっても人殺しの娘。あたしが何をした?! 何も悪いことなんてしてない!! あたしの家族を返してよ!」

「……っ」

私は唇をぎゅうっと噛み締めた。


これが真実ならば、美蘭の育った環境は確かに酷いものであり同情されるべきものだとは思う。

けれど、私に対しての言動は明らかな逆恨みであり、決して彼女から私が加害者と言われる謂れはない。

私は色んな感情を湧き上がるが、その中でも強く思った感情をそのままで彼女に伝える。


「……可哀想な人」

「はぁっ?!」

「そうやって逃げないと生きていけなかったのね」

「話をすり替えんじゃないわよっ。全部あんたのせいよ! あの時、父が謝罪に行ったとき……一言……許すと言えばよかったじゃない!」

(……ああ、そうか)

(そうだったんだ……)

美蘭のその言葉に私は悲しさのあまり、ずっと心の片隅に置き去りにしていた記憶を引っ張り出す。


(あの時、会ってたんだ)

(私と高梨さんは──)



──確かあれは両親が死んでお葬式が終わった次の週だったと思う。加害者である芝田が妻と子供をつれてうちに謝罪にきたのだ。

けれど、私も祖母も謝罪は受け入れられなかった。強く拒絶して、そのあと何度連絡があっても会うことはなかった。


「父は毎晩、うなされていたわ。お酒に溺れるようになって、誰もいない部屋の片隅に向かって一日中謝ってることもあった。ワザとじゃないのに……なんで許してあげなかったの! アンタが父も母も殺したも同然よ!」


その言葉にようやく全てが繋がる。

どうして美蘭が私に数々の嫌がらせをしたのか、会社で私を貶めようとしたのか。

でも全てを知った上で私の答えは変わらない。

変えようがない。

だって私にとっても、両親はかけがえのない存在だったから。

──大事な家族だったから。

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