クズなキミからの不適切な溺愛
「こぼしたらいけないし、光莉さんと少しでもくっつきたいから。ダメすか?」

見上げれば、屈んだ吉良くんと至近距離で目が合う。

私の心臓はすぐに駆け足になって、私はふいっと視線をそらした。

「もうっ、さっきより近いっ」

「言っときますけど、ワザです」

そのまま吉良くんは何食わぬ顔で私のこめかみにチュっとキスを落とす。

「わぁっ!」

私は思わずパン粉をつけたチキンカツを持つ手に力が入った。

「光莉さん、肉が悲鳴あげてますよ」

「ああっ、もう! 吉良くんのせいで握りつぶしたじゃないっ」

「あはは、チキンカツ握りつぶしてる人初めて見ました」 

「誰のせいよっ」

「俺ですね。責任もって食べますよ」

吉良くんはニッと笑う。見れば全てのチキンカツにもう卵をつけ終わっている。そして彼は何事もなかったかのように手を洗うと、炊けた炊飯器のご飯をかき混ぜてお茶碗を取り出している。

(揶揄われるのはさておき、なんて手際がいいの)

(いい旦那様になりそう……)

彼と付き合って数ヶ月だが、料理の後片付けもしてくれるし、私が料理中にカーペットをコロコロで掃除をしてくれたりと、さりげないお手伝いがとても助かっている。

「俺、いい旦那になりますよ?」

「な、……え……っ?!」

一瞬、吉良くんは頭の中を読めるのかと思ったがそんなことはありえない。
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