クズなキミからの不適切な溺愛
「……和馬、どう言うこと?」

自分とは思えないほどに低く掠れた声だった。

「あー……、バレちゃったか。んー、見ての通り美蘭といま付き合ってるんだけど」

「付き合ってる?」

悪びれもせずに、目の前のこの男は一体何を言ってるんだろうか。


「うん、ほんと隠しててごめんね。光莉といると結婚?とか考えてて重いし、疲れるんだよね。でも僕と別れたら可哀想でいいだせなかったんだ」

「可哀想? 私が?」

「そうですよ〜、27にもなって騙されてた挙句、別れを切り出されるなんて可哀想じゃないですかぁ。和馬は新名先輩のことを思って美蘭とのこと言い出せなかったんです。許してあげてくださいっ」

上半身裸の和馬の横でキャミソール姿の美蘭が両手を合わせてごめんなさいのポーズをしている。

「ふざけないでよ!」

「きゃっ……」

私の怒声に美蘭が大袈裟に和馬に抱きつく。

「二人とも頭おかしいんじゃない!」

「はぁ。光莉、声のボリューム落とせよ。ご近所に迷惑だろ、美蘭も怖がってるし。ほんと可愛げもなけりゃ常識もないよな」

「嘘ついて二股するような、あなたに言われたくない」

「うわぁんー新名先輩、ごめんなさぁい。和馬は悪くないんですー。和馬のこと好きになっちゃった美蘭が悪いんです」

その薄っぺらい演技に和馬が美蘭の肩をそっと抱く。

「泣くなよ。美蘭、ごめんな」

「和馬は悪くないもん。美蘭が全部悪いのー」

「違うだろ、光莉が一番悪いんじゃん」

(私が?)

私が怒りから拳を握ると同時に和馬が私に敵意を秘めた目を向ける。

「おい光莉。美蘭泣かせんなよ、はやく謝って」

「何で私が謝らなきゃいけないの! そっちこそ謝ってよっ」

「そう言う頑固なとこも意地っ張りなとこも、うんざりなんだ」

和馬は当てつけのように深くため息を吐き出す。

「はぁあ……。てか話終わったなら帰ってよ。また僕から会える気分になったら連絡してあげるから」

「その必要ないから! 二度と私に連絡しないでっ」

私は手に握りしめたままだった合鍵を和馬に向かって投げつけると、そのまま外へ飛び出した。


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