クズなキミからの不適切な溺愛
今すぐ何も考えずにめちゃくちゃに抱いてしまいたい。
どんなに泣いても嫌がっても俺のものにしてしまいたい。

「えっとですね……」

「……ごめんね。やっぱりいい」 

「待って」

彼女が手を離そうとして、俺はすぐにその手を掴んだ。

可愛すぎる彼女のお願いを無下になんて俺にはできない。

(気合いだ)

(とりあえず、羊でも数えるしかない)

(煩悩を捨て去れ!)

俺は最大限、平静を装い余裕のある男を演じてみせる。

「じゃあ手繋いで寝よ。あんまくっつくのだけはナシで」

「うん、わかった。気をつけるね」

本当に男の切実な事情がわかっているのかは不明だが、俺と一緒のベッドで眠るだけで嬉しそうに無邪気に笑う彼女はやっぱり愛おしい。


俺はリモコンで部屋の電気を消す。

「おやすみ、吉良くん」

「おやすみ、光莉さん」 


案の定、すぐに寝息を立て始めた彼女を見ながら俺は繋いだ手に力をこめた。

(いよいよ明日か)

「明日、全部話すから……ひーちゃん」

明日の夏祭りが終わる時、きっと俺たちの関係も未来も変わるだろう。

だからこの曖昧でもどかしい時間をもう少しだけ、楽しむのも悪くない。

俺は彼女の寝顔を愛おしく感じながら、羊を数えて眠りについた。
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