クズなキミからの不適切な溺愛
彼の打ったコルクがパンダのマーチのど真ん中に当たり、勢いよく倒れた。

「お、当たり」

「きゃあ、すごい!」

──カランカラン

「おめでとうございまーす」

おじさんの声とともに彼がニッと笑うと、私にパンダのマーチを差し出した。


「いいの?」

「この流れで、これ俺が食うとか引きません?」

「あはは、確かにそうかも。ありがとう」

「どういたしまして。お願い、あとで聞いてくださいね」

「えっと……できるだけ簡単なのにしてね」

「了解です」

満面の笑みを見せる彼にまたドキンとしつつ、その後、私たちはヨーヨーをしてフランクフルトを食べた。

食べ終わると、彼が私の分と一緒に串をゴミ箱に捨てる。

「喉乾きませんか?」

「あ、確かに」

「ちょっと待ってて」

そう言って彼が駆けて行った先をみて、私は思わず目を細めた。数分後、戻ってきた彼の手の中にあったのは『サマーサイダー』だ。


「それ、大好き」

「初恋の思い出、でしたっけ?」

「え? 覚えててくれたの?」

「そうですね……すごく印象的だっので」

そう言いながら、彼が私の手を引く。


「ここは人が多いので、裏の方行きましょうか」

「そうだね」

「光莉さんとちゃんと話したいし」

彼の言葉の最後に心臓がとくんと鳴る。

そう、今日この夏祭りで私も彼に伝えたい。
ありのままのこの気持ちを、丸ごと全部。

私は黙って頷くと彼と一緒に神社の境内の端にある、桜の木の下に移動した。

屋台から離れているため、あたりには人はいない。
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