クズなキミからの不適切な溺愛
「はい。確か八歳の時かな。ひと夏だけ一緒に過ごした少し年上の女の子がいたんです」

(あれ……なんか、似てる?) 

「俺が引っ越すことになって最後に二人で夏祭りに行って……」

彼は夏風に黒髪を靡かせながら、夜空を見上げる。

「今夜みたいに星が綺麗だったんですけど、その子が着ていた水色の浴衣があまりにも似合ってるから、なんか目のやり場がなくて上ばっか向いて星見てるフリして」

「水色の……浴衣?」

「はい。向日葵柄の浴衣でした」 

(そんな偶然……ある?)

私があの日、『おーちゃん』と一緒に夏祭りに行った時、着ていた浴衣は祖母が仕立ててくれた淡いブルーの向日葵の柄だった。

「明るくてよく笑う、俺に大事なことを教えてくれた女の子でした」


私は心臓が駆け足になっていく。

私の思い出が何故だが吉良くんの思い出と重なって、呼吸が浅くなって、心の中に淡い期待が芽生え始める。 

「その子、……どんなこと、教えてくれたの?」

「ちゃんと心で想ってることは言葉にしないと、何も伝わらないって」

「それ……」

「俺、光莉さんにずっと言いたかったことあるんです」

彼が私の正面に立つと真剣な眼差しを向ける。


「なんで光莉さんなのか、どうして光莉さんじゃないと駄目なのか。それは……」


とくん、とくんと鳴っていた心臓は、とくとく早くなって胸が苦しくなる。

そしてなぜだか、目の奥が熱くなって目の前の吉良くんが滲んでいく。


「──ひーちゃんだから」

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