クズなキミからの不適切な溺愛
「ん? 吉良くん? どうかしたの?」

「いや、全然なんもないっす」

心の中を全て曝け出すには、まだまだ時間がかかりそうだ。俺だって好きな人の前ではカッコつけたい。男はそういうどうしようもない生き物なのだ。

俺は全ての煩悩を脳みその片隅に追いやると、平静を装ってソファーの前の木製テーブルにマグカップをことんと置いた。


「冷めないうちにどうぞ」

「片付けもしてくれたのに、お茶までいれてくれたの?」

「当然です。俺、彼女には尽くしたい派みたいです」

「ええっと、それはその、ありがとう」

やや恥ずかしそうにした彼女がソファーの下に座ると、俺はすぐにドライヤーを持ってくる。

「乾かしますね」 

「えっ、いいよ、自分で……」

「俺、彼女は甘やかしたい派でもあるんです」

「ええっ……」

困った顔の彼女もやっぱり可愛い。

「はい、くつろいでてね」

「くつろげるかな……」

「じゃあ俺の好きなとこでも考えててください」

「もうっ吉良くん、そんなことばっかり」

俺は彼女が口を尖らせるのに目を細めながら、コードを差し込むと、光莉さんの後ろのソファーに腰掛けた。

無防備な後ろ姿は色気があってたまらない。

「ね、お願いあるんだけど」

「わっ、ちょっと……」

ワザと耳元で話せば、彼女の身体が僅かに跳ねる。

(光莉さんって耳弱いよな) 

彼女が耳を押さえながら、くるりと顔だけ俺に向ける。

「えと、お願いって何?」

「名前で呼んでよ」

せっかく正式に付き合えたのに吉良くん呼びは面白くない。

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