クズなキミからの不適切な溺愛


「間に合ったー」

「マジでギリすね」

何とか始業五分前に自社ビルのエレベーターに乗り込むと私たちは三階を目指す。

すでにほとんどの社員が出社しているのだろう。エレベーターは二人きりだ。


扉が閉まれば、すぐに吉良くんが「あっ」と声を漏らした。

「吉良くん、どうかした?」

「あ、光莉さんに言うの忘れたなって」

「何を?」

「ええっと、俺の身元?」

「え? どういうこと」

「それはですね……」

彼は手元の時計を確認する。


「ああっ、やっぱ時間ないな。とりあえず、俺は俺なんで嫌いにならないでってそれだけです」

(?)

そしてエレベーターを降りると、滑り込みで私たちはそれぞれのデスクに到着した。

すぐに課長の朝礼が始まるかと思いきや、課長さらteamsに接続するよう指示される。

(朝からなんだろう)


teamsの画面に映し出されたのは、50代の男性だった。そしてその男性は我が社の社員なら誰もが知っている人物だ。


『皆さん、おはよう御座います。代表取締 役を務めている樹城寛志(きしろかんじ)です。本来ならば皆さまの前で直接お話しするべきところですが、仕事の都合がつかず申し訳ありません』

(社長ロス在住だったよね)

(それと社長からこんな突然の朝礼?って初めてかも)

樹城社長は今季の売上達成率や目指すべき数字について簡単に説明していく。

『……それでは最後に辞令を発表します』
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