クズなキミからの不適切な溺愛
──カランとドアベルが鳴って、店内に入ればすぐにバーテンと目が合った。

金色の短い髪にシャープな目元が印象的な髭を生やした男の名前は神楽亮輔(かぐらりょうすけ)
俺の高校時代からの悪友だ。


「恩志、お疲れさん」

「どうも」

俺はカウンターに腰かけると、すぐにマティーニを注文する。亮輔がここのマスターから店を譲り受けたのが一年半ほど前。それ以来、俺はちょくちょくここへ来るようになった。

元は芸能人御用達のバーだったらしく今もその名残を受けて、一見さんお断りの会員制のバーなので知り合いに会わずに酒を楽しめるのが気に入っている。

 

「てか、金曜なのにデートは?」

「予定ないから来てんじゃん」

「そう。恩志が女の子と予定ないのも珍しいな」

「いい加減、適当なのも飽きてきたし」

「言うね~」

「いいよな、亮輔はあったかい家族がいて」

俺がほぼ無意識に発した言葉に亮輔が唇の端を持ち上げる。

「急にどうした? 悩みなら聞くぞ」

「面白がるだけのお前には言わねぇわ」

亮輔は高校の時から交際していた他校の彼女と昨年結婚し、現在生後三ヶ月の娘がいる。

いわゆる授かり婚とかいうやつだが、亮輔は家族ができてから纏う空気が柔らかくなった。

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