クズなキミからの不適切な溺愛
(人間、満たされてると、ああなんのかな……)

今のところ彼女もいなければ結婚の予定もなく、そもそも本気の恋愛をしたことない俺には到底わからない。

「はい」

俺は亮輔からマティーニを受け取ると、一気飲みする。

「お~いい飲みっぷり。で? 相変わらず本命は落とせないか?」

「本命なんていねぇし」

「だいぶ前に酔って言ってたぞ?『ひーちゃん』?」

「な……っ」

亮輔は俺の反応を楽しみながらすぐに二杯目のマティーニを作ると俺の前にことんと置く。

「そんなに気になんなら掻っ攫えばいいじゃん」

「それができたら苦労しねぇんだよ」

「お。認めたな。どんな子?」

「……っ。面白がるばっかのお前には言うかよ」

「それは残念」

強い酒のせいでさっそく少し酔いが回ってきた頭にぼんやりと彼女のことを浮かべてみる。

(俺が『おーちゃん』とか夢にも思ってないんだろうな』

「ま、俺としては恩志にそういう相手ができて嬉しいけどな。今まで恋愛にマジになったことない恩志に春がきたわけじゃん」

「春ねぇ……」

俺はずっと恋愛に本気になるなんて馬鹿のすることだと思っていた。

両親の離婚を経験している俺は、実のところ恋も愛もよくわからない。

(どんなに好きでも惚れても、仮に想いが伝わっても人の気持ちは変わる)

(人間にずっと同じなんてモノはない)

でもそんな俺の中で、唯一変わらなかったのは初恋の思い出だけだった。
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