クズなキミからの不適切な溺愛
俺はグラスを傾けながら、じっと見つめる。

(向こうは気付いてないんだから、どうしようもねぇじゃんか)

だから俺は適当な相手と適当なことを繰り返している。

飯食ってセックスしてバイバイ。

何も考えなくていい、適当なラクな関係で誤魔化して逃げている。

恋だの愛だの俺には不必要なモノだと言い聞かせるようにして。

(ひーちゃん、か……)

新名さんと初めて会ったときは勿論、俺も気づかなかった。

でもある日、何気なく彼女に入社動機を尋ねた際に、ビー玉を片手に少し照れくさそうにしながら話してくれた思い出が、俺の中の大事な思い出と重なった。

それからすぐに、俺の中に彼女が棲みつくようになった。


でも新名光莉は部署の先輩であり入社した際の教育担当。俺たちは先輩と後輩の新入社員。

彼女にとって俺たちの関係は、それ以上でもそれ以下でもない。

だからまずは彼女に仕事で認められたい、釣り合う男になりたい。そんな子供じみた発想から俺は仕事に打ち込んだ。

そして初めて営業で大口の仕事を取ったときの彼女の笑顔は今でも忘れられない。

──『吉良くん、やったね』

自分のことのように誰よりも喜んでくれたことが、顔には出さなかったが嬉しかった。

両親は共働きで多忙だったため、物心ついた頃から俺には何かいいことがあっても、自分のことのように喜んでくれる人はいなかったから。

この(ひと)の笑顔がもっとみたい。

──もう()ってしまおうか。

彼女からビー玉の話を聞いた際、俺は貰った相手の名前について尋ねたが、彼女は忘れてしまったと言っていた。

だからもう過去とか思い出とか関係なしにストレートに告白しよう、そう思った。

でもその矢先に偶然、彼女と犬井のツーショットを目撃してしまったのだ。
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