クズなキミからの不適切な溺愛
俺はAIへの相談と並行して、最近ひそかに購入した『恋人と末永く一緒にいられるマニュアル本』を読み込んで日々実践しているのだ。

本によると、恋愛とは押しと引きが大切で、愛情は適量を適度に、過剰にならないように注ぐのがポイントらしい。

あまりに愛情が重いと相手が疲れてしまうらしく、かといって愛情表現が不足すれば、不安にさせたりすれ違いの要因になったりするとのこと。

(俺としては……もっとくっついときたいけど)

(ここは適度に愛情表現をしたうえで、さっと引くべきところだ)

(うん、合ってる)

俺が一人頷いていると、彼女がこちらに手を差し出した。

「ん? 光莉さん?」

「上着掛けとく」

「あ、いつもありがとうございます」

俺はすぐにジャケットを脱ぐと、半分に折って彼女の小さな手に渡した。

「ふふ、いつもお礼言ってくれるけど、このくらい全然だよ」

クスっと笑う彼女を見れば、やっぱり今すぐにでも抱きしめて、今度こそ押し倒して唇を塞いでしまいたくなる。

(可愛すぎて、もはや何も言えないな)

(このお礼はベッドで必ず……)

(って、俺は光莉さんの善意に対してなんて卑猥なことを!)

俺は不意に降臨した煩悩をぶんぶんと頭を振って、かき消す。

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