クズなキミからの不適切な溺愛
俺には決して見せたことが顔を、アイツには無邪気に無防備に見せる彼女に無性に苛立った。

(アイツにはあんな顔すんのかよ)

それと同時に自分にはもっと苛立った。

彼女を気持ちも笑顔も自分のものにしたいと気づいたものの、どうしたらいいのか分からない。

本気の恋愛なんてしたことがない俺には、その方法が思いつかない。

だから時折、雑談しながら犬井と別れたかどうか確認しては落胆して、それでいて諦めだけは悪くどんな女の子と付き合っても抱いても満たされない。

だって、俺は新名光莉が欲しいから。

違う。

──新名光莉だけしか欲しくない。


「なぁ亮輔。俺ってどんなヤツだっけ?」

「んー、俺からしたら女に関して百戦錬磨と見せかけてレンアイ童貞」

「は? レンアイ……童貞?」

「そうそう。マジの恋愛したことない男をそう呼ぶらしいぞ」

俺はそのワードを頭に浮かべてから、イラッとする。

「誰だよ。そんなくだらないネーミング考えたヤツ」

「ははは。いやほんと、その顔面でマジの恋愛したことないとか可愛いすぎんだろ」

「黙れ。ばーか」

(マジの恋愛とかするとか思ってなかったからだろーが)

そう口に出せばますます亮輔がニヤけそうで俺は心の中に留めた。

「恩志の初恋相手か~、マジで気になるわ」

「もう一回言ったら、グーパンな」

「あはは。ほんっと見た目に寄らず拗らせてるよな」

「どういう意味?」

「そのまんまだけど?」

「あー、その顔ムカつく」

「まぁ、俺からアドバイスするとしたら、その時が来ればちゃんと言葉にするんだな」

(そんなのいつだよ)

俺はジロリと亮輔を睨みながら、ナッツを口に放り込む。

俺のことを思い出す可能性はゼロに近く、俺になんの興味もなく、フラれるのがわかってる恋。

「……難しすぎんだろ」

俺はそう言って二杯目のマティーニを飲み干すと、亮輔が笑うのも構わず、大きなため息を吐き出した。

「ご馳走様でした」

「また何かあったらいつでも」

俺は会計を済ませると、亮輔に片手をあげて店を出た。

まさかこの後、俺の初恋が動き出すとも知らずに──。



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