クズなキミからの不適切な溺愛
目の前の光莉さんのこの顔は、俺のことをトイプーとして見ているときの顔だ。
口には出していないが、彼女の顔には間違いなく“可愛い”の文字が浮かんでいる。


「俺、ぜんぜん可愛くないですよ」

「わかってるよ」

「ほんとですか?」

「うん。あと私もなんか幸せ。一緒にご飯食べてるだけなのにね」

彼女が発した言葉から、俺はまた小さな幸せを今日も一つもらう。

同じことを感じてくれていたことに、心がどうしようもなくあったかくなって、目の前の彼女がどうにもこうにも愛おしい。もう愛なんて言葉でも足りなくなってきそうだ。


「俺も毎日幸せですよ」

(きっと光莉さんに会うために生まれてきたんだろうな)

全然、俺らしくないと思いながらもそんなことが自然と脳裏に浮かぶ。

そして俺が『ごちそうさま』と箸を置くと、ほぼ同時に光莉さんも『ごちそうさま』と箸を置いた。


「お腹いっぱいだね」

「ですね」 

「けど、飲み物はいけるよね?」

「え? まぁ、大丈夫ですけど?」

「じゃあ、あれ持ってくる」

(ん? あれってなんだ?)

光莉さんはグラスと一緒にそれを冷蔵庫から取り出すと、順にテーブルに並べていく。

俺はてっきり、温かいルイボスティーか紅茶かと思っていたため、思わず目を見開いた。

「あの、光莉さん。これ……」

「うん! 金曜の夜だし、わが社の“旬ツリーチューハイ”飲み比べしよ」

最近、“旬ツリーチューハイ”の新商品として、チェリー、ラズベリー、夏みかんの三種が発売されたばかりなのだ。

「これ新商品ですよね」

「ちょうどスーパー行ったら売ってたから全種類買ってきたの~」

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