クズなキミからの不適切な溺愛
「……っ」

私はほっぺたを爆速で自分の左手で覆うと、予想外の彼の行動に口をパクパクさせる。  

(キスの仕方、慣れすぎ……っ)

(心臓が……今ので血圧50は上がったかも)


「ん、もっかい?」

「……ち、違うっ」

なんとか声を絞り出すと彼が意地悪く笑う。

「次は別のとこにしますね」

「だ、ダメに決まってるでしょ」

「どこ想像したんですか? 俺が言ったのは手の甲だけど?」

「……っ、私だってそうだよ!」

そう言っても顔が熱すぎて、取り繕うのは不可能だ。彼がまたククッと楽しげに笑う。

「そう言うことにしときますね」


吉良くんは色気たっぷりの笑みを私に向けてから、玄関扉へ向かっていく。

(心臓がいくつあっても足りない……)

(翻弄されっぱなしだわ)


そして彼は靴を履くと、私を振り返る。

「今度、デート行きません?」

「え?」

「光莉さんのこともっと知りたいし、俺のことも知って欲しいなって。また行きたいこと考えててください」

「ええっと、わかった」

吉良くんは満足げに頷くと、私に手を振りながら玄関をあとにする。

パタンと閉じられた扉の音を聞き終わると私は熱を帯びた顔をテーブルに突っ伏した。

「イケメンってやっぱりすごい破壊力……心臓持たないよ。どうしよう……なんか……このままじゃ」 

(ほんとに好きになりそう……)

吉良くんに助けられたり、癒されたり、翻弄されたり。揶揄われたり、意地悪されたり、キスされたり。

この期間限定の恋はなんだか不適切ながら、胸が騒がしくて扱いが非常にムズカシイ。


その時、私のスマホにメッセージが入る。 

──『ちゃんと玄関閉めてくださいね』

──『あと、寝る前もし泣きたくなったらいつでも電話して』


「ほんとズルい……」

吉良くんに女の子が途絶えないのは、こういう意地悪と優しさと気遣いの絶妙なバランスなのだろう。


私はテーブルの上に残された彼の空っぽのマグカップを見ながら、やっぱりため息を吐き出した。
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