クズなキミからの不適切な溺愛


その夜、吉良くんは試飲会のあと取引先の重役たちと飲み会に参加することになったと連絡がはいり、それ以降まだ連絡はない。


(もう二十三時か……)

吉良くんの前でスッピンを晒すのはどうかと思いつつ、一度未遂事件もあったことから私はシャワーを済ませるとルームウェアに着替えた。


(今日泊まったり……する、のかな?)

今まで吉良くんは外で食事をした帰りにコーヒーを飲みに家に来ても、日付が変わる前には必ず帰って行く。


──『ちゃんと好きになって貰えるまでは帰ります』


最近、その誠実さをもどかしく思っている自分に私はずっと気づかないフリをしている。

「全然……クズなんかじゃないよね」

(それどころか……好きになる一方だよ)


素直に言葉に出してしまえば、この小さな恋の芽はどんどん膨らんで、きっとコントロールできなくなってしまう。

だから恋愛偏差値の低い、臆病な私は彼にこの気持ちを伝えられずにいる。

(いつかは言わなきゃいけないけど……)


──ピンポーン

(あ! きた)

私はすぐに玄関扉を開ける。


「ただいま、遅くなりました」

吉良くんは緩めたネクタイ姿で少し目がトロンとしている。

(結構飲んだのかな?)

「お疲れ様、入って」 

「はい……」


彼はリビングに行くと、やや気怠げにソファーに腰掛けた。
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