クズなキミからの不適切な溺愛


朝食後、吉良くんは着替えに帰った。そしてもうすぐ私を迎えにくることになっている。

(五分前だし降りとこう)


私は海と言う場所と電車で行くことを想定してジーンズに甘めの白いシャツにした。

そして肩掛けバックを持ってスニーカーを履くとアパートの階段を降りていく。

エントランスに辿り着けば、ちょうど目の前に一台の大型バイクが停まった。


「──お待たせしました」

ヘルメットのシールドが上げられると、見慣れた切長の目と目が合う。

「え! 吉良くん?!」

「あ、電車だと思ってました?」

「うん、だからすごいびっくりした」

「すいません、言ったつもりになってました。でも服装バッチリですね」

吉良くんの視線が私の服装に向けられて、それだけですぐに顔が紅潮してくる。


「可愛い」

「やめてよ……」 

「だって言葉にしないと伝わらないから」

(え?)

その言葉に私は思わず目を見開く。昨晩のことがあったからだろうか、『おーちゃん』との思い出が頭によぎって一瞬吉良くんと重なった気がした。

(そんなことあるわけないのに)

「光莉さん?」

「ううん、なんでもない」

「はい、これ被ってくださいね」

吉良くんは手際よく私に真新しいヘルメットを被せるとバイクに跨り、後ろを指差した。

「ここに座ればいいの?」

「抱っこは無理なんで」

「もう……っ」

私はおずおずとバイクの後ろに跨ると、吉良くんの肩に手を置いた。

するとその手は、すぐに彼の腹部へと移動させられる。

「落っこちる気ですか。しっかり掴まっててくださいね」 

「うん」

(すっごいドキドキする……)

(心臓の音、聞かれちゃいそう)


私が言われた通り両腕に力を込めて、彼に掴まれば、バイクはすぐに走り出した。

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