クズなキミからの不適切な溺愛
「え?! お母さん?」

「すぐ言わなかったのは、なんかよく考えたら母親に頼るなんて不甲斐ないなって思っただけで……その、嘘ついてないすからね」

そう言って吉良くんは名刺入れから、名刺をこちらに差し出す。

──『神崎(かんざき)法律事務所 弁護士 吉良菖蒲(きらあやめ)


「ええっ、すごい」

「……すごいかどうかは俺は法律に疎いんでわからないんですけど、今後もし犬井さんが何かしてきたら、法的に対処してもらおうと思ってます」

「もう大丈夫だと、思うけど……」

「けどじゃ俺が心配なんです。あらゆるコネ使ってでも光莉さんを守りたい。だから何でも俺に言って?」

私の額にこつんと吉良くんの額が当てられて、至近距離の彼に顔が熱くなる。

「いい?」

「分かった」 

「いい子ですね」

キスでもされるのかと身構えたが、吉良くんが「会社なので」と意地悪く笑うと私から、何事もなかったかのように、すっと離れる。

優しくされても意地悪をされても、私の心臓はドキドキしっぱなしだ。

吉良くんは資料を片手に資料室のドアノブに手をかけ扉を開ける。

「《《新名さん》》、仕事もう終わりですよね?」

「え? あ、うん」

扉を開けて廊下に出た瞬間、新名さんと呼ぶ彼に一瞬遅れて返事をする。

(もう切り替えてる)

と思ったのも束の間、彼はエレベーターに乗ると私を覗き込む。


「ねぇ《《光莉さん》》、ラーメンでも行きません?」 

「……っ」

(もう……っ、これは絶対ワザと)

「だめ?」

「い、いよ」
 
(結局、吉良くんのペースだわ)

そっぽを向いて返事した私に彼がククッと笑った。

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