クズなキミからの不適切な溺愛
「お祭り?」

「はい。夏祭りの日、ちょうど三か月なんです。だからその時、ちゃんと気持ち聞かせてください」

「……わかった」

「あと一か月、好きになってもらうために全力つくしますね」

もうとっくに好きだよ、そう言いたいけれど彼の優しい眼差しにその言葉を飲み込む。


「じゃあ光莉さん、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

吉良くんは私の頭を優しく人撫ですると、背を向けた。

(なんだろう)

(懐かしいような)

(大事な何かを忘れてしまっているような)


吉良くんとの別れ際は、なぜだかいつも記憶の片隅が引っ張られるような感覚がする。

私は夏の風に吹かれながら、忘れてしまっている記憶を探すように、暫く彼の背中を見つめた。
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