クズなキミからの不適切な溺愛
ついあからさまな反応を見せてしまったことを悔いるがあとの祭りだ。

吉良があたしにぐいっと顔を近づける。

「──過去の《《アレ》》が原因ですか?」

「な……っ、なんで」

含みのある笑みにあたしは目を見開く。

(なんでこの男が知ってるの?)

(いや、そんなわけない。だってあの事件は……)

(誘導尋問には引っかからないわよ)

あたしは吉良を睨みつける。


「……何のことかわからないわ」

吐き捨てるようにそう言うと、吉良を突き飛ばすようにドンと肩をぶつけ、事務所のドラノブに手をかけた。

「待って。高梨さん、なんで? なんで私にこんなことするの?!」

「こんな、こと?」

あたしは悲劇のヒロインぶったセリフに、いよいよ腹を抱えて笑いたくなってくる。

(ほんと、奪った者は奪われた者の気持ちなんてわからないのね)

そろそろ潮時も近い。あたしがなんでこんなことをするのか知りたいのなら、この女ももう少し、知る努力をするべきだ。

「愚かな新名先輩にひとつだけ、ヒントをあげる」

「ヒント?」


「《《あの日》》から……あんただけは許さない」

「え?」

「あとは自分の胸に手を当てて考えてみたら」

あたしは二人をギッと睨みつけてから、事務所をあとにした。

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