That's not such a big deal, is it?
「何度も思うけど、ここでやっていける自信がないなあ」
「はは、俺もだよ」
厨房内のシンク。
ここで桃瀬と春風は皿洗いをしている。
押し付けられたわけではなく、料理を作ったなら片付けまでしたいという春風の意向のことだった。
「これが夢だったら良かったのに」
「そうだよな…。誰かが死ぬなんて考えられないよ」
曖昧に頷いた桃瀬が、
「ごめんなさい、無駄話しちゃって。作業進めましょうか」
と洗い物に視線を移したので、春風も会話をやめて自分のやるべきことを行った。
「…ね、春風さん」
桃瀬は洗い物が一段落し食器をふきんで拭きながら、春風の方に顔を向ける。
「ん?何?」
「自分のために、仲間を手にかけられますか?」
「…っ」
同じく食器を拭いていた春風の動きが止まる。
さっきまでずっと考えないように、忘れたままでいるように努めていたのにまた思い出してしまった。
「えっと…それは…」
「なんちゃって、冗談だよ。でも、有り得ない話ではないですよね?きっとみんながみんなでいられるのも今日限り__」
「それでも、俺はみんなと生きたい。帰りたいんだ」
春風は桃瀬の目を見てしっかりと言葉にする。
共感してもらえなくても、自分の気持ちだけはわかってほしかったから。
「あー…、すみません。春風さんの気分を害すつもりも、そんな顔をさせるつもりもなくて。…お手伝いさせてくれてありがとうございました。失礼します」
手にしていた食器を片付けると、桃瀬はそのまま去っていった。
「……………」
桃瀬は何を言いたかったのだろう。
桃瀬は自分のためなら仲間を殺せると言いたいのだろうか。
春風もそうであると願っていたのか?
…けれど、あれは冗談だと。
考えていてもわからないことばかりなので、春風も片付けを済まして厨房を後にした。