家族になった来栖くんと。
今はもう辞めちゃったけれど、何曲かはマスターしている。
その中でも今日という日にピッタリな1曲を選んできた。
「…つぐみさん?どうぞ?」
「っ、は、はい…」
ただ、この私。
極度のあがり症なのである。
ピアノの発表会に出た回数は、なんと過去に1度のみ。
家ではスラスラと弾けてしまうのに、観客たちの前となると話は別だった。
今も鍵盤に触れようとする手が、震えて震えてしょうがない。
「つぐ、落ち着け」
「つぐみちゃんも緊張してるのよ。かわいいね」
「いや、たぶんあいつビビってるだけ」
「もう。そんなこと言ってあげないの」
そして新郎新婦に気を遣わせる。
何回か聞かせたことあるな…とか。
放課後の音楽室。
カーテンが風に揺れるふたりだけの音楽室で、彼のためだけに弾いたな…とか。
今になって、なんとなく泣きそうになった。