家族になった来栖くんと。




今はもう辞めちゃったけれど、何曲かはマスターしている。

その中でも今日という日にピッタリな1曲を選んできた。



「…つぐみさん?どうぞ?」


「っ、は、はい…」



ただ、この私。
極度のあがり症なのである。


ピアノの発表会に出た回数は、なんと過去に1度のみ。

家ではスラスラと弾けてしまうのに、観客たちの前となると話は別だった。


今も鍵盤に触れようとする手が、震えて震えてしょうがない。



「つぐ、落ち着け」


「つぐみちゃんも緊張してるのよ。かわいいね」


「いや、たぶんあいつビビってるだけ」


「もう。そんなこと言ってあげないの」



そして新郎新婦に気を遣わせる。


何回か聞かせたことあるな…とか。

放課後の音楽室。

カーテンが風に揺れるふたりだけの音楽室で、彼のためだけに弾いたな…とか。


今になって、なんとなく泣きそうになった。



< 14 / 337 >

この作品をシェア

pagetop