家族になった来栖くんと。




「っ…!」


「トイレ?水?どっち」



壁伝いにリビングへとたどり着く手前、身体がそっと背後から支えられた。



「お、おみず……」


「わかった。ソファー座れる?」


「…うん」



私の物音に気づいて助けてくれたのか、たまたま鉢合わせただけか。

真相は来栖くんにしか分からない。



「はい。飲めそう?」


「ご、ごめ……、…あ、ありがとう」


「…いーよ。他にもなんかあったら言って」



夢を見ているのかもしれない。

私のとなりにピッタリくっついて、覗きこむように優しさをくれる。


声も、雰囲気も、温度も、ぜんぶが夢みたい。


間接照明が照らされるリビングに、私のゴクゴクと飲みこむ音が静かに響いた。



「冷えピタ、替えたほうがいいな…」


「だ、大丈夫…、自分でできるから…」


「…………」



手を払いたかったわけじゃない。
優しさを振り払いたかったわけじゃない。

でも、このままだと泣いてしまいそうだったから。



< 160 / 337 >

この作品をシェア

pagetop