家族になった来栖くんと。
「あ……、」
「………、」
それから帰宅して、ちょうど玄関を開けようとしたタイミング。
私が手をかけるより前にドアが開いて、そこにいたのは来栖くんだった。
どこか複雑で、無意識にも視線を外してしまう。
ボストンバッグ……?
これ、来栖くんがここに来たときに荷物を入れていたバッグだ。
「どこか、いくの…?」
「…お世話になりました」
「え?」
「予定ではもうすぐ親も帰ってくる頃だし、もうここに世話になる必要ないから」
自宅に帰る、と。
これ以上迷惑かけるわけにはいかないと、そんな常套句で彼は我が家を出ていこうとしていた。
「……そっか」
案外すぐに納得をした私を前に、ほんの少し彼は目を開く。
「来栖くん、あの日…、私、見ちゃったんだ」
今なら言える。
これであなたとはもう、顔を合わせることはないだろう。
両家がわざわざ集まるようなイベントも、とくには無いだろうから。
「あの日…?」
「中学3年のとき、放課後だよ。…来栖くんがクラスメイトの子たちに、私とは付き合ってないって言ってたの」
「っ───!!ちがう、あれは、」
「ううん。もういいの。私……好きなひと、できたよ」