家族になった来栖くんと。
サイレン、拉致、北高。
なにも情報がないなかで探していた俺には、これ以上ないほどのヒントだった。
「ねえ、北高のだれを拉致してんの?」
「…ああ?だれだテメェ」
寸前で、俺は迷った。
このまま警察に戻って再度訪れたほうが確実だと、安全策を取った一択。
でも、ここでも、だ。
意思とは関係なく身体が動いてしまう。
唯一、とある人間にだけ簡易的にメッセージを送って。
「もしかして白山 つぐみ…とか言わないよね?」
「ッ!!おいリンカっ、こいつ目撃者だぞ…!!」
「はやく捕まえて…!!」
抵抗はしなかった。
男は俺の身体を乱暴に掴むと、腹に一撃入れてくる。
ガハッと咳き込んで、あとはポケットに入っているスマホに託すだけ。
声をかける手前でボイスメモを作動した、スマホに。
「北斗くんっ、ほくとくん…っ」
連れられた熱風と湿気の溜まった倉庫の奥から、聞き慣れた声が聞こえてくる。
弱々しい悲鳴のような叫び声は、俺に安心だけじゃないものを与えてきた。
もう、なんだっていい。
俺じゃない名前を呼ばれていたとしても、なんだっていーよそんなの。