家族になった来栖くんと。




ひとつひとつ紐解かれるように、身体だけはしっかりと覚えていた。


シャッター音、ライトの光、私を取り囲むような笑い声。

迫りくる手、タバコの匂い、くらりと脳を揺らしてくるアルコールの匂い。



「そのとき変わった匂いだったりはしなかった?」


「変わった匂い…。ハーブ、みたいな…。それと注射器があって……」


「それをつぐみさんに当てられたりは?」


「たぶん…してないです」


「…そう。もう十分よ。無事で本当によかった」



家にやってきた女性刑事さんは、必要最低限の尋問だけで帰っていった。

今のが簡易的な事情聴取なのだろう。
私の精神状態でできる、最低限。



「つぐみ。須和くんが会いにきてくれたわ。…どうする?」


「……会え…ない…」


「…わかったわ」



合わせる顔がないよ……。

事件の翌日、母親から私のスマホを使って彼に説明を入れてくれたが、私本人としての連絡はあの日から一切。



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