家族になった来栖くんと。




単純に謝罪の気持ちだ。

両手が塞がっているようだし、よく見ると片方の紙袋を汚してしまった。


昨日は雨が降っていたから、地面が湿っていたんだ。


たぶん予算的にも弁償だけはできそうにないもん…。



「じゃー、お願いしちゃおっかな」


「はい…!よろこんで!」


「あははっ。喜んでくれるんだ?」


「…はい。私にできることがあれば…」



覗き込まれて、つい顔を隠す。


だって荷物持ちで許されるなら嬉しい限りだ。

見るからに高そうな紙袋で、コスメやバッグもプチプラではなさそう。



「じゃあまだ、この街にきて1ヵ月なんですね…!」


「そうそう。だから迷っちゃって。でも、ちょうどいい子に出会えてラッキーだったよ」



聞くところによると、彼は引っ越してきたばかりなのだと。

きっと春から大学生で、新生活を始める準備をしていたのだろう。


意外と会話が盛り上がったのは、私たちのフィーリングが合ったのではなく。


彼の気さくさが自然と運んでいってくれたのだ。



< 93 / 337 >

この作品をシェア

pagetop