氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 目の前に置かれた見慣れないカラフルな菓子をすすめられて、リーゼロッテはそれならと遠慮なく桃色の菓子を選んでひとつ口にした。

(マシュマロだわ、これ!)

 もちもちとした弾力のある菓子が口の中でふしゅりと溶けていく。ただ甘いだけでなく、フルーティーな酸味がリーゼロッテの口いっぱいに広がった。

 頬に手を当てながらへにゃりとなっているリーゼロッテを、アデライーデは楽しそうに見やった。この場にいる誰もが同じように微笑ましそうな表情をしている。

「ギモーヴというのだそうよ」
「まあ、ギモーヴというのですね。このお菓子、わたくしとても好きですわ」

 お顔を見ていればわかります。お針子・侍女一同はそう思いながら、あまりの可愛さに身震(みぶる)いするのをこらえていた。

「さあさ、あなたたちはアデライーデ様に集中なさい!」

 マダムの一声で、お針子たちが一斉(いっせい)に動き出す。右向け左向けとされているアデライーデの目が、まるで死んだ魚のように濁っている。領地で自分もあんな表情をしていたのかもしれない。

「ああ、そうだわ、リーゼロッテ。ジークヴァルトにはあれはもう見せてもらった?」
「あれ……でございますか?」

 こてんと首を傾ける。

「先日、母がこちらに届けたと言っていたのだけれど。……その様子じゃまだ見てないのね」

 操り人形のごとくお針子たちに好きに動かされながら、アデライーデはしばらくリーゼロッテと見つめあっていた。じっと考えこんだ顔から、いきなりにやっとした顔つきになる。

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