氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 これはまったく次元が違った。ちりばめられた宝石が放つ光の乱反射に目も心も奪われる。そして、それ以上に存在感を示す、守り石の美しい青の揺らめき……。
 この部屋にいる誰しもが、このひとそろいの装飾(そうしょく)に言葉を無くしていた。

「それはフーゲンベルク家に代々伝わるもので『オクタヴィアの瞳』と言うの。当主の婚約者に贈られるしきたりなのよ」
「では、これはわたくしに……?」

 こんな高貴(こうき)そうなものは恐れ多くて、自分にはふさわしいとは思えない。不安そうな顔つきのリーゼロッテに、アデライーデはいたずらっぽく笑った。

「その守り石にはヴァルトの力が込められているから、何も心配はいらないわ。ちょっと前までお父様の力が込められていたのだけど、新しく代を()いだ当主は、前当主の力を超えて守り石に力を(そそ)がないといけないのよ」

 そう言われてリーゼロッテは手のひらをそっと守り石にかざしてみた。その石からは確かにジークヴァルトの力が感じられる。

「リーゼロッテのデビューに間に合ってよかったわ。これをつければ、今期のデビュタントのいちばんの話題はリーゼロッテになること間違いなしね」

 ジークヴァルトはピクニックの時に、デビューの飾り物は別に贈ると言っていた。きっとこれのことだったのだろう。

「もしかしてこれは、ものすごく質のいい守り石なのですか?」

 守り石にも品質があって、良い物ほど込められる力が多いと以前ジークヴァルトが言っていた。この石に力を注いで満たすのは、とても大変なことなのではないだろうか?
 多少なりとも力を扱えるようになったリーゼロッテは、そう思って眉を下げた。

「何を気にしているか知らないけど、代々そうやって受け継がれてきたものだから、気を遣うことなんてないわよ」
「……はい」
「ねえ、リーゼロッテ。もしかしてだけど、あなた、ジークヴァルトの気遣いを申し訳なく思っているの?」
「申し訳なくと申しますか……お忙しいヴァルト様のお手を(わずら)わせているのだと思うと、どうしても気になってしまって……」

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