氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「……さっきはきつい言い方をして悪かったわ」
「い、いいえ! わたくしが(いた)らないばかりに、アデライーデお姉様に……」
「リーゼロッテ、そうじゃないでしょう?」

 リーゼロッテの言葉を制止して、アデライーデはニヤッと笑って見せた。しばし考え込んだ後、リーゼロッテは先ほどと同じくお手本のような淑女の笑みを作った。

「そうよ、それ」
 満足そうに頷くとアデライーデはリーゼロッテの(あご)に手を添えた。

「そうね、顔の角度はこう。その笑顔もいいけど、もっと、こう、何を言われているのかわからない、そんな表情を少しのせてみて?」

 本当に何を言われているかよくわからなかったリーゼロッテは、曖昧(あいまい)な笑みを浮かべて小首をかしげた。

「そう! それ、いいわ! ついでに、そんなつまらないこと言うなんて、この人はなんてバカなんだろう、そんな気持ちもひと(さじ)(ふく)ませれば、もう完璧(かんぺき)ね! 違うわ、もっと(あわ)れむ感じで……そう! それよ!」

 それと言われても、いまいちどれなのかよくわからなかったが、リーゼロッテはとりあえず言われた表情をキープした。

「ああ……いいわ、リーゼロッテ、あなたなかなか才能があるわ。いい? 夜会で誰かに心無(こころな)いことを言われたら、必ずその顔を作るのよ? 下手に言い返したりしなくていいから、黙ってその顔で微笑んでいれば、あとはそれでうまくいくから」

(口は(わざわ)いのもと、ということかしら……?)
 リーゼロッテはアデライーデがそう言うならと、普段のはにかむ笑顔に戻って「はい、お姉様」と頷いた。

「いやぁん、なんでこんなに可愛いのぉっ」

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