氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
「お姉様! たのしいですわ!」
「ふふ、わたしもたのしいわ」

 ふたりは手を取り合って、軽快なワルツの調べでダンスを踊っていた。

 あの後、社交界へとデビューする不安などを相談しているうちに、ダンスの話題となった。舞踏会では不特定多数の人間と踊ることになる。リーゼロッテは伯爵領で、義父や義弟のルカとダンスのレッスンをしていたが、それ以外の者と踊った経験はない。
 そのことを話すと、自分は男性パートを踊れるからとアデライーデがダンスの練習に付き合ってくれることになったのだ。

 公爵家のダンスのレッスン専用の部屋は、かなり広く立派なものだった。
 この世界には録音できる機械のようなものはないので、レッスンでも基本生演奏(なまえんそう)だ。伯爵家ではピアノの伴奏に合わせて練習していたが、公爵家ではお抱えのオーケストラがいたから驚いた。普段はほかの仕事に従事しているらしいが、お呼びがかかれば楽団員が集結するらしい。

 そんなわけで、広いダンスフロアをアデライーデにリードされながら、オーケストラの演奏に乗せてリーゼロッテはくるくると踊っていた。一緒に踊っているつもりなのか、そのまわりをおめめきゅるるん隊が思い思いに楽しそうに()()ねている。

(たのしいけど、息が上がってきたわ……)

 三曲目あたりから、足が思うように動かなくなってきた。さりげなくアデライーデがフォローをしてくれるので、ダンス自体はみられるものになっていたが。

「リーゼロッテは三曲が限界みたいね」

 そう言うアデライーデは、少しも疲れている様子はない。騎士団での鍛錬(たんれん)に比べれば、ダンスの数曲くらいは準備運動くらいにしか感じなかった。

「はい……時間を空ければまだ踊れそうですが……」
 演奏が止むと、リーゼロッテは息も絶え絶えの状態になった。

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