氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「アデライーデ様! あなた様は一体、何しちゃってるんですか!?」
「何よ、マテアス、(やぶ)から棒に」

 息を乱しながら駆け込んできたマテアスを前に、アデライーデはこれ見よがしにリーゼロッテを引き寄せてその胸に抱きしめた。

「アデライーデお姉様?」
 身を任せながらも、リーゼロッテは不思議そうにアデライーデの顔を(あお)ぎ見ている。

「あああ、ダンスの練習のお相手なら旦那様がいくらでもいたしますのにっ! ほんと、なんてことしてるんですかぁ!」

 リーゼロッテの髪をなでなでしているアデライーデに、マテアスは裏切り者を見るような顔つきを向けた。

「リーゼロッテ様、今からでも旦那様とぜひダンスを……」
「あぁら、残念。リーゼロッテはもう疲れたものね? 今日の練習はもう、おしまい」
「ぐっ、なんたる非道(ひどう)……」

 眉間にしわを寄せるマテアスをアデライーデは鼻で笑った。 

「別にいいじゃない。本番ではどうせ独り占めするんでしょ? 硬いこと言わないで」
「この件だけではございませんよ! オクタヴィアの瞳を勝手に持ち出したそうではないですか! あれは今日にでも旦那様からリーゼロッテ様にお見せするはずだったのに……!」

 マテアスは心底(くや)しそうに歯噛(はが)みをした。自分の算段(さんだん)(どお)りにいかないことほど、腹が立つことはない。

 マテアスの計画ではこうだった。

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