氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あの、ジークヴァルト様……」
「なんだ?」

 リーゼロッテはジークヴァルトを見上げながら、その青い瞳をじっと見つめた。

「先程アデライーデ様に、オクタヴィアの瞳を見せていただきました」
「気に入ったか?」

 緑の大きな瞳に映りこむ自分は、うまく感情を(かく)せているだろうか?

「はい、とても……守り石がとても綺麗で……わたくし、一目で心を(うば)われました……」
 リーゼロッテは一度言葉を切って、はにかむような笑顔を向けた。

「ヴァルト様、わたくしのためにお心をくだいてくださってありがとうございます。とても……とても、うれしいですわ」
「……そうか」

 なぜ離れようなどと思ったのだろう。彼女を守ることこそ、自分の選ぶべきただ一つの道だというのに。

 そう、話は単純だ。
 (おのれ)不可解(ふかかい)な感情などに(まど)わされるからいけないのだ。
 自分はただ彼女の笑顔を守ればいい。
 それを(かたわ)らでみているだけで――

「あ、雪が……」

 リーゼロッテが手のひらを上に向けながら、ぶ厚い雲のかかる空を見上げた。
 先ほどから急速に冷え込んできたと思っていたが、いつの間にか雪がちらついてきた。白い息がリーゼロッテの赤くなった頬にまとわりついている。

 ぶるりと小さく(ふる)えたリーゼロッテを見て、ジークヴァルトは自分が着ている外套のボタンをはずした。そのままリーゼロッテを外套で包み込むと、元通りボタンをはめていく。
 ジークヴァルトの胸板に背を預け、ボタンをしめられてしまったリーゼロッテは、頭まですっぽりと外套にくるまれてしまった。

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