氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「わたくしばっかりずるいですわ。ほら、ちゃんとあーんしてくださいませ」

 駄目だ。胸がざわざわする。
 このままずっとこうされていたい気もするが、これ以上は非常に危険なようにも感じる。

 ジークヴァルトは観念(かんねん)して口を薄く開いた。ここぞとばかりにリーゼロッテは指に持つ菓子を口の中に押し込んでくる。

 口内で広がった酸味(さんみ)にジークヴァルトはぎゅっと口を引き結んだ。眉間のしわも先程以上に深くなる。

「え? おいしくなかったですか?」
 リーゼロッテが不安げに顔を(のぞ)き込んでくる。

「いや、少し酸っぱいな」
「え? 酸っぱい?」

 驚いたようにリーゼロッテは目を丸くした。

「旦那様は子供のころから酸っぱいものが苦手でして」

 いつの間にかすぐそばに来ていたマテアスが、ジークヴァルトの前に追加の冷めた紅茶を差し出した。それを受け取ってジークヴァルトはぐいと一気に飲み干す。
 それを見たリーゼロッテは、くすくすと笑いだした。

「申し訳ございません。そうと知っていたら、もっと甘い菓子を選びましたのに」
「いい。別に食えないわけではない」
「ちなみに旦那様は甘い物も得意ではありませんので」

 そう付け加えたマテアスを、余計なことは言うなとばかりにジークヴァルトは(にら)みつけた。

「まあ、それは困ったわ」

 リーゼロッテがこてんと首をかしげると、マテアスが名案を思い付いたように糸目を輝かせた。

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