氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 そのままリーゼロッテはジークヴァルトにエスコートされて、馬車が停まる外へと移動した。馬車の前には護衛のエーミールとヨハン、それに侍女のベッティが待っていた。その奥にカークが直立不動でたたずんでいる。

「よろしく頼む」

 ジークヴァルトが静かに言うと、「お任せを!」とエーミールとヨハンはそろって騎士の礼をとり、その後ろでカークがぴしりと姿勢を正した。

「グレーデン様、ヨハン様。この度は護衛を引き受けてくださってありがとうございます」

 リーゼロッテがふたりに淑女の笑みを向けると、カークがもの言いたげに首を向けてくる。

「カークもまたお願いね?」
 柔らかく微笑むと、カークはこくこくと頷いた。

「そういえば、ヨハン様はカークが前回、どうやって移動していたのかご存知ですか?」

 こてんと首をかしげると、ヨハンは言いにくそうに急にもじもじと指を動かしだした。(いか)つい大男が身を(ちぢ)こまらせてモジつく姿は、可愛いとみるか気持ち悪いとみるかは意見の分かれるところだ。

「はい、存じておりますが……我が先祖は……その、そこに乗って移動しておりました」

 不敬で申し訳ありません、と消え入りそうな声で付け加えたヨハンの指は、何やら馬車の上の方向を指している。一同の視線がそこに集まると、カークも一拍遅れてゆっくりとそちらの方に顔を向けた。

「この上に?」
 リーゼロッテが公爵家の馬車の屋根の上を見上げながら、ヨハンに聞いた。

「はい……大変申し訳ありません……」

「まあ! わたくしはてっきり、カークが馬車の後ろを全力(ぜんりょく)疾走(しっそう)していると思っていましたわ」

 くすくすと笑っているリーゼロッテを見て、ヨハンはほっとした表情をした。その横でエーミールが何かを言いたげにジークヴァルトに視線を送った。

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