氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
(周りにはそう見えるのなら、マテアスたちの作戦はある意味成功してるってことね)

 マテアスやエッカルトは、ジークヴァルトが自分を子供としてしか見ていないことを懸念(けねん)して、いろいろと画策(かくさく)しているのだろう。

 近い将来、(ちか)いを立てるふたりの最重要任務(にんむ)は、後継(あとつ)ぎを作ることだ。その任務を円滑(えんかつ)遂行(すいこう)するためにも、今のうちに少しでもジークヴァルトとリーゼロッテの距離を縮めておきたいのだろう。

 石でも踏んだのか不意に馬車が不規則に揺れる。それと同時にリーゼロッテの胸元の守り石が小さく()ねた。ペンダントの石をそっと手に取り、揺らめく青をじっと見つめる。
 レースのカーテンがひかれた馬車の窓から陽が差し込んで、流れていく光が時折(ときおり)守り石に反射した。

(子供の頃、よくこうして石を光にかざしていたっけ……)

 青い守り石が光を返す様はとても綺麗で、ずっと見ていても見飽きない。ジークヴァルトの瞳と同じ色をした石の揺らめきを、リーゼロッテはじっとみつめた。

 昔ジークフリートからもらったペンダントは、実のところジークヴァルトが力を込めた守り石だった。
 初めて会った日、ジークヴァルトは禍々(まがまが)しい黒いモヤに(おお)われていて、それはそれは恐ろしく見えた。もしもあの日に、ジークヴァルトの顔をきちんと見ることができて、ジークヴァルトから直接ペンダントを手渡されていたのなら。

(わたしの初恋の人はジークフリート様ではなく、ヴァルト様になっていたのかしら……?)

 たらればの話をしても意味はないとはわかっているが、ついそんなことを思ってしまう。黒いモヤさえ見えなければ、あれほどジークヴァルトを毛嫌いすることもなかっただろう。

< 163 / 684 >

この作品をシェア

pagetop