氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
「やだ! エラ、どうしたの? 今日はやけにめかしこんでるじゃない!」

 会う者会う者に同じように声をかけられる。

 マダム・クノスペたちが帰って行ったあと、ベッティに施された化粧を落とそうとすると、せっかくだから今日はそのままでいてはどうかとリーゼロッテに言われたのだ。
 さすがに結い上げた髪は元に戻したが、リーゼロッテがよろこぶならとそのまま仕事に戻ったエラだった。

 いつもは意図的(いとてき)(ひか)えめな化粧で目立たないようにしているエラだが、がっつりメイクをしている今の彼女は、清楚(せいそ)でいてどこか理知(りち)(てき)な印象を与える正統派(せいとうは)美人(びじん)となっている。

 女性陣には(おおむ)ね受けはいいが、昔から一緒に働いている男たちにぽかんと見つめられたり、やけによそよそしくされて、少しばかり居心地(いごこち)がよくない。

 普段から姿勢のいいエラは、今日はいつも以上に(りん)とした雰囲気をかもしだしていた。そんな近寄りがたい美人と化したエラに、男たちは()(おく)れしているようだ。

「わっエラ! すっごい美人がいると思ったら、あなただったの! 何? 今日はデート?」
「ちょっと、その話題はダメだって!」

 すれ違った侍女仲間に声をかけられ、エラは苦笑(にがわら)いした。ペーターとの別れ話が広まって、どこへ行っても気を使われて困っているのだ。

「公爵家から来た侍女に化粧をしてもらったのよ。見ての通り彼女の腕前(うでまえ)はすごいから、みんなも一度お願いしてみたらどう? 彼女の技能は侍女として学ぶものがたくさんあるし」

「ああ、ベッティさんね。さすが公爵家の侍女って感じよね」
 エラの化粧をまじまじと見ながら、ひとりの侍女が言った。

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