氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「エーミール様がよろしければ旦那様にお(うかが)いしてみますが……」
「ああ、そうしてくれ。わたしからも伯爵に話してみよう。……他には何か提案はないか?」
「他に……もしお時間が合えば、わたしが街のご案内などさせていただきますが」
「ああ、それはいいな。一度ダーミッシュ領の街並みを見てみたいと思っていた」

 自分の提案が快く採用されて、エラは自然と笑顔になった。

「では、そちらも旦那様にお願いして参ります」
「よろしく頼む」

 エーミールに柔らかく微笑まれて、エラは顔を赤くした。

「戻るなら部屋まで送るが」
「いいえ! エーミール様はごゆっくり休憩なさってください。あ、わたしが言うのも何なのですが……」
「ふ、その様子ならもう大丈夫そうだな。では、わたしは失礼する」
「今日は本当にありがとうございました」

 深々とお辞儀をして、エラはエーミールの背を見送った。

(今日はいろんなことが起きる日だわ)

 気分のアップダウンが激しい日だと思いながら、エラは再び廊下を歩いていた。
 ふと思い出して、廊下の窓に自分の顔を(うつ)して化粧の具合を確かめてみる。

(あれ? 意外とまとも)

 ガラスに映る自分の顔は、やや涙の(あと)が残るもののお化けのような有様(ありさま)にはなっていなかった。

(ベッティはいったいどんな化粧を使ったのかしら……)

 泣いても落ちない化粧など、興味がありすぎる。それは特別な化粧品なのか、メイクの技術なのか。あとで絶対に秘密を聞きださなくては。

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