氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
もちろんエラは泣いてなどいない。ヨハンはバツが悪そうに手に持ったハンカチを引っ込めた。
「もしかして見てらしたのですか?」
「ああ……助けに入ろうかとも思ったのだが……以前アデライーデ様に、女性同士の諍いに男が口をはさむものではないと叱られたことがあってだな……だから、その……本当にすまない」
「いえ、そのようにしていただけて、こちらもむしろありがたかったです」
ああいった言い争いに男がしゃしゃり出ると、こじらせて後々ややこしいことになる。特にあの少女のようなタイプは、さらに闘志を燃やしてねちねちと陰湿な手段に走りがちだ。アデライーデの言うことはまったくもって正しいとエラは心底同意した。
「あの女性が手を上げたときは、思わず出ていきそうになったんだが……エデラー嬢は強い人なのだな」
「え? いいえ、そのようなことは……。ああいったことはよくあることですし……」
「そうなのか? しかし最近の市井の女性は、随分とあけすけな物言いをするのだな……」
別に市井だからというわけではないだろう。あけすけな女は貴族の中にもたくさんいる。しかし、ヨハンの中の女性像を崩すこともないと思い、エラは曖昧に笑うにとどめた。
「カーク様、ありがとうございます」
エラが深々と頭を下げると、ヨハンは慌てたように言った。
「いや、オレは結局ただ見ていただけだ。エデラー嬢の助けになったわけではないし」
「いえ、そのお心遣いだけで十分感謝いたします」
エラが頭を上げて微笑むと、ヨハンは顔を赤くした。
「そ、そうか。そう言ってもらえるとオレもうれしい」
照れたようにわちゃわちゃしているヨハンの手から、先程のハンカチが滑り落ちた。
「あ、カーク様、ハンカチが……」
「もしかして見てらしたのですか?」
「ああ……助けに入ろうかとも思ったのだが……以前アデライーデ様に、女性同士の諍いに男が口をはさむものではないと叱られたことがあってだな……だから、その……本当にすまない」
「いえ、そのようにしていただけて、こちらもむしろありがたかったです」
ああいった言い争いに男がしゃしゃり出ると、こじらせて後々ややこしいことになる。特にあの少女のようなタイプは、さらに闘志を燃やしてねちねちと陰湿な手段に走りがちだ。アデライーデの言うことはまったくもって正しいとエラは心底同意した。
「あの女性が手を上げたときは、思わず出ていきそうになったんだが……エデラー嬢は強い人なのだな」
「え? いいえ、そのようなことは……。ああいったことはよくあることですし……」
「そうなのか? しかし最近の市井の女性は、随分とあけすけな物言いをするのだな……」
別に市井だからというわけではないだろう。あけすけな女は貴族の中にもたくさんいる。しかし、ヨハンの中の女性像を崩すこともないと思い、エラは曖昧に笑うにとどめた。
「カーク様、ありがとうございます」
エラが深々と頭を下げると、ヨハンは慌てたように言った。
「いや、オレは結局ただ見ていただけだ。エデラー嬢の助けになったわけではないし」
「いえ、そのお心遣いだけで十分感謝いたします」
エラが頭を上げて微笑むと、ヨハンは顔を赤くした。
「そ、そうか。そう言ってもらえるとオレもうれしい」
照れたようにわちゃわちゃしているヨハンの手から、先程のハンカチが滑り落ちた。
「あ、カーク様、ハンカチが……」